本展覧会は、太陽の降り注ぐ展示室で開催される。太陽が自分たちの周りを回っているのではなく、自分たちが太陽の周りを回っていると、そのことに初めて気づいた人はどう思ったのだろうか。
大岩雄典ー太陽光と家具
大岩が設えた展示室の床の縁取りは、家の間取りである。室内や外のテラスに置かれたいくつかの物品は何らかの出来事を思わせうるが、それがどんな出来事なのか、そもそもそんな出来事自体あったのか、は想像するしかない。卓上にはパズルやなぞなぞもあり、種の明かされるまえの謎かけのような不気味さをまとう。私たちが立っている場所はどこなのだろう。ここに立っている私たちは誰だったろうか。
渡邉庸平ー太陽光と呼吸
渡邉庸平《大きな光の中で》はカレンダーのある日と別のある日が互いに接し合い、戯れるような3Dアニメーション作品である。太陽光の動きによって、2つのカレンダーは1日の光の中に包み込まれている。《猫の肌理、雲が裏返る光》は、肌理の表面、光の反射、送られたたピント、カレンダーが猫へと変容する映像などのシーンが音楽のように組み立てられた映像作品である。ナレーションによって、それらの関係性が語られる。
中西真穂ー太陽光と観光
中西は生まれ故郷である札幌、生活圏である埼玉や東京などの場所で撮影された写真を構成し発表する。バスの車内、道路、柵、建築物、通行人、窓越しの風景などが被写体となっている。中西は「観光」を様々な光景を通過するバスの運動になぞらえる。中西の作品には撮影者の身体性が強く入り込む。そもそも写真とは透明なメディアでは決してなく、撮影者の視点を常に抱え込んでしまう。観光が、自分を起点にしか何かを感じ得ないように。写真はどんな写真であろうと観光(感光)写真なのだ。